「万博からワイン・美術品・ロボット展示まで…関税ゼロで魅せる!保税制度とは」

「万博からワイン・美術品・ロボット展示まで…関税ゼロで魅せる!保税制度とは」

この記事を書いた人

行政書士 鬼頭文
・プライベートを含めて約35か国以上を訪問した経験をもつ
・貿易支援も可能な 数少ない行政書士
・通関業者や企業の貿易部門、営業、広報などで培った豊富な経験と知識を活かし、日々様々なクライアント様の相談にのっている。

(公財) あいち産業振興機構 経営技術専門家、国際アドバイザー
(一社) 海外事業支援センター (OBAC) アドバイザー


目次

【クイズ】まずは軽くクイズ!

もうすぐ終わってしまう大阪・関西万博。名残惜しいですが、「会場で使われている特別な制度」って知っていますか?
いきなりですがここでクイズです✨万博会場についての記載で正しいのは次のうちどれでしょう?

A. 万博会場は普通の展示場と全く同じ仕組みで運営されている
B. 万博会場は「保税展示場」という制度を使っていて、海外からの展示物を関税・輸入消費税を払わずに展示できる
C. 万博の展示物はすべて日本国内でいったん全額関税を払ってから展示される

海外と事業をやられている方は絶対知っておきたいこの制度。答えはこの記事の最後に


保税制度とは?ざっくり言うと…

「保税制度」を皆さんはご存じでしょうか。簡単に言うと、輸入するモノの関税や輸入消費税の支払いを一時的に保留できる特別な制度のことを指します。この制度を活用することにより、輸入する貨物を税関の許可がおりるまで、特別な場所で保管したり、簡単な加工や展示が関税や輸入消費税を払わずにできます。
輸出入の手続きをスムーズにしつつ、関税や輸入消費税の納付のタイミングを調整できるので、事業者の資金繰りやリスク管理上とてもメリットの大きい制度となっています。

主な保税関連の施設や制度を簡単にご紹介すると以下となります:

  • 保税蔵置場
    日本に到着した貨物を関税や輸入消費税を払わず、貨物を保管する場所です。
  • 保税工場
    日本に到着した貨物を関税や輸入消費税を払わず、加工や製造に使える工場です。
  • 保税展示場
    展示会やイベントで、日本に到着した貨物を関税や輸入消費税を払わず、一時的に展示できる施設です。
  • 総合保税地域
    複数の機能ををまとめた特別なエリアのことです。

    参照:税関『保税ポータル』
       https://www.customs.go.jp/hozei/hozeiportal.html

関西万博での保税制度の活用と税関出張所の役割

2025年に開催された「大阪・関西万博」に皆さまは行かれましたでしょうか。実は、万博は会場自体が「保税展示場」として大阪税関より許可を受けて開催されています。「保税展示場」の許可を受けることにより、海外から持ち込まれた展示品を関税・消費税を払わずに展示することが可能となっています。
会場内には大阪税関の出張所も設けられ、様々な対応(展示品ではなく実際に日本国内へ流通することとなる製品の通関手続きなど)を迅速に行い、物流や商談がスムーズに進む体制がとられています。

参照:2025年日本国際博覧会公式サイト『大阪税関より万博会場の保税展示場許可を取得』
    https://www.expo2025.or.jp/news/news-20230328-01/
   大阪税関『管内保税地域・承認工場一覧』
    https://www.customs.go.jp/osaka/news/hozeiichiran.html


保税制度の具体的な活用事例

「大阪・関西万博」でも活用された「保税制度」ですが、実は過去の万博はもちろん、様々な用途で活用されています!以下は一例です。他にも承認や許可を受けている事業者の一覧は税関にて公開されています。
税関『保税ポータル』保税地域一覧表・承認工場一覧表 → https://www.customs.go.jp/hozei/hozeiichiran.htm

  • 寺田倉庫「保税ギャラリー」
    海外の美術品を税金を払わないまま展示・商談できるスペースとして利用。温湿度管理や大型搬入機器も整っていて、アート市場の活性化に貢献しています。
  • Aichi Sky Expoの常設保税展示場
    ロボットサミットや国際博覧会などとして利用。国内唯一の常設展示場。多くの国際イベントで利用されています。
  • ワインや酒類の保税倉庫利用
    温湿度がしっかり管理された倉庫にワインを保管し、流通時期手前で輸入通関を実施。効率的な資金繰りが可能に。
  • 大型国際イベント(東京モーターショーなど)
    保税展示場としての許可を受け、海外製品を関税・輸入消費税をを払わずに展示可能。イベント後の再輸出もスムーズです。
  • 名古屋・松坂屋の保税蔵置場
    2023年11月、中部地方の大手百貨店では初めて松坂屋名古屋店が店内に保税蔵置場を開設。
    輸入宝飾品や高額美術品を通関前の状態で保管・展示できる仕組みで、百貨店側としては税金を気にせず高額な商品をお客様に見てもらうことを可能としています。

あなたのビジネスにどう役立つ?

  • 海外の新製品やサンプルを関税や輸入消費税を気にせず日本で展示したい
  • コストや資金繰りを考えて、必要なタイミング・分量だけ輸入通関したい
  • 他国から到着した製品を国内販売用の貨物と海外向けの貨物を分けて管理したい

などなど、保税制度には多くのビジネス上の利点があります。

【クイズの答え】

つまり、答えは「B」でした!大阪・関西万博の会場は会場自体が「保税展示場」として大阪税関より許可を受けています。このような許可を受けることにより、海外から持ち込まれた展示品を関税・消費税を払わずに展示することが可能となっています。


まとめ

保税制度は輸出入ビジネスの一助を担う、大事な制度です。
税関に対してしっかりとした手続きをする必要がありますが、許可を得ることができれば、あなたのビジネスにもきっと力を貸してくれます。

気になることや疑問があれば、お気軽にご相談ください。皆さまのお力になれれば幸いです✨

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